普遍的な人の道
道徳と言いましても、特別なことはありません。具体的にいくつか見てみましょう。
・子曰く、人にして信無くんば、其の可なるを知らざるなり。(論語)
信用がないような人に、良い所などない―
信用は貴重な無形の財産です。先人も強調するところで、例えば三越を興した日比翁助などは、多くの方から大きな信頼を得ていたがために、成功した典型です。日常実行する際は、例えば大小を問わず、約束を守ることが信頼への第一歩となります。
・子曰く、過ぎたるは猶ほ及ばざるが如しと。(論語)
超過は不足と同じで、「程度」が大切である―
「中庸の徳」という言葉がありますが、いずれにも偏らないことの大切さを教えたものになります。例えば水分は足りなければ脱水になってしまい、重度になると命を落としてしまいます。だからといって、一日に五リットルも六リットルも摂取するのはやりすぎであり、やはり危険を伴います。努力のように突き抜けることも必要ですが、日常実行する際は、過不足ないように調節するのが良いでしょう。
・君子は人の美を成して、人の惡を成さず。小人は是に反す。(論語)
君子は人の成功や善行を願い、協力するものだが、小人はこの反対をする―
「人の不幸は蜜の味」と言葉がありますが、優秀な人を妬み、その失敗を望むのが偽らざる人の姿。なればこそ、一人一人がお互いに良いことをし、成功するように助け合うことで、組織としても大きな力を得ることができるのです。例えば一人勝ちが続かないように譲り合う―これを心掛けることで謙虚さも身に付き、分かち合うこともできるようになっていきます。
・君の明かなる所以の者は、兼聽すればなり。(貞観政要)
誰からも意見を聞き求めることが、明君の明君たる所以である―
明君に限らず、人の忠告や進言には耳を傾けるべきです。然るべき所以があって言ってくれるのであり、無下にしてはなりません。しかし「忠言は耳に逆らいて行に利あり」と言葉があるように、大変耳障りなものです。それはちょうど良薬は口に苦くして病に利があるごとしで、虚心坦懐に受け入れることで大いに自分のためになります。日常実行する際は、このような言葉をはねつけることなく、しっかり受け止めることで、成長へつながります。
いくつか例として見ましたが、このようなものになります。自分を磨くものであることが、お分かりいただけることかと思います。